常盤の雲、群青の空

いろいろかきます

Bang Dream! 2nd Season を今更見た

 2024年現在、世はまさに大ガールズバンド(アニメ)時代と呼ばれている。それは、2022年に放送されたアニメ、ぼっちざろっく!を筆頭に2024年のガールズバンドクライとガールズバンドを主体としたアニメーション作品がヒットしたことによる呼称である。

10代の女子キャラクターを中心にバンドで奏でる音楽と青春群像劇のマリアージュは抜群で、人々が惹かれるのも頷ける。

私はというと学生時代にけいおん!が流行ったまさにけいおん!世代ではありつつも、友人からCDを布教され曲だけは聞いたことがあるというなんとも微妙な立ち位置だった。当時私がハマっていたのはSound Horizon少女病Asriel等アニメーションとは少し離れた音楽たちで、しかも歌詞が物語となっているものも多く、人とは少し違った音楽との向き合い方をしていたのかもしれない。

 

 そんな私が2023年の夏に、出会ってしまった作品がある。それが通称MyGO…Bang Dream! It’s MyGO!!!!!である。

迷子たちの話はまたいつか書き連ねたいと思うが、私はこの作品でMyGO!!!!!にどっぷりとハマってしまい、約10年ぶりにライブ公演へ足を運ぶこととなるほど掛け替えのない作品となった。

MyGO!!!!!だけでは飽き足らず、その星の鼓動の起源、つまりバンドリと呼ばれる来年で10周年を迎えるフランチャイズを辿る長い旅をはじめてしまったのだった…

 

 大ガールズバンド時代。そんな言葉と共に幕を開けるBang Dream! 2nd Seasonはまさに現在を生きる私が触れるにぴったりの作品であっただろう。

 

 

 2nd Season はPoppin'Partyのみを取り扱った1期とは違い、5バンドも追加し傍から見ればおもちゃ箱のようにごちゃごちゃしまとまりのない作品のように見える。実際1話のしゅわ~しゅわからはじまるパスパレの演奏シーンに度肝を抜かれたし、その後の大ガールズバンド時代という言葉に納得せざるを得ないというのを1話たっぷり使って見せつけられる。

1コーラスだろうが全バンドの曲、そして演奏を見せるという荒業。大ガールズバンド時代という一言で解決してしまうバンドリという世界。そしてそれでも1話が破綻していないのは、登場する5バンド全てのコンセプトが明確に分かれ、演奏シーンが飽きることなく展開していくからだろう。そして演奏シーンだけでキャラクターの自己紹介を済ませてしまう構成も面白い。キャラ間の短い掛け合い、そして音楽だけでそれが出来てしまうというのが、アニメ1期から続くキャラクターが脚本都合で動かされていない、生きた人物として表現できているだからだと、私は思っている。

 

 そんな色んなバンドたちの話も絡まりつつ、今回のシーズンでも中心となるのはポピパだ。1期で描かれたのがポピパというバンドの誕生秘話だったのなら、今作はそれこそ一生バンドをする決意を描いていた。そしてその決意に絡んでくるのは夢の話だ。

今回のシーズンで特にポピパと対比して描かれていたのがRoseliaだ。序盤からその対比は明確で、Roseliaの確固たる姿勢は何度もポピパの前へ立ちはだかる。先輩バンドとしてのその頼もしい背中は見方を変えれば見上げるほど高い壁となる。SPACEというライブハウスに立ちバンドとして一歩を踏み出したポピパにとって他バンドの存在が気になるのは当たり前の話だろう。音楽が好き。演奏が好き。バンドが好き。みんなが好き。アマチュアでも客を集め演奏する立場ならば、ただ好きだけではない、ファンを楽しませるという目的が生まれる。“やりきった”と言い切れるまでの努力を演奏に乗せ、声を、響きを伝えなくてはならない。

 ポピパが決してダメな演奏をしているわけではないということは、ポピパのファンである朝陽六花の視点から何度も描写されている。それでも、それでもポピパの5人は思い悩む。眼前で奏でられる圧倒的な完成度に。Roseliaという世界に。果たして自分たちは同じステージに立つことができるのか。

ポピパはポピパ。見ていて元気で楽しそうでバンドって最高だ~という気分にさせてくれる。ファンが喜んでくれる。それだけでいい。いいはずなのにどこかギクシャクした関係はやがて自分の技術に納得がいかないギタリスト、花園たえの話へと集約していく。

 

 2nd Seasonがこれほど多くのバンドを物語で描きつつもポピパを主軸とした話を進められたのは、1期でポピパの結成を丁寧に描いてきたからこそだ。はじめは友達でもなんでもなかった5人。それぞれ悩みを抱えて高校へ進学し、挑戦することを避けていた。一人では抱えてしまう不安も、二人なら…そしてこの5人なら相談して解決することができる。高校時代の友人だからこそ話せることもあるし共通する悩みもあるし、同じ立場から支えてあげることができる。そしてバンドメンバーの背中を押す…よりも力強く、前で引っ張ってくれる香澄が、迷路に迷い込み歌うことができなくなったあの日。夕暮れの公園で紡がれる、過去との決別の詩で4人は香澄に感謝をし、かけがえのないバンドメンバーとして5人を“ポピパ”へと結束させていく。ただのアマチュアバンドの、友達で組んだ仲良しこよしなバンドかもしれない。それでも、それだからこそ奏でられる音楽がある。そしてその掛け替えのない音楽は、誰にも届かないものではなく、確実にファンへと届いていると結成から1年たった今、六花が証明してくれた。

 

 そのバンド結成の想いがある中で、花園たえがあの思い出の公園で紡ぐ詩はポピパをよりポピパへと導いた。たえのサポートギターとして積んだ経験は決して無駄ではない。ポピパ結成の前から約束を紡いだ幼馴染との協奏の日々は眩しい。それでもステージに、バンドを組むことに踏み出せなかった少女をステージへ上げたのは香澄で、ポピパで、その1年間の思い出は決して色あせることなく鮮やかに輝き続ける。RASとポピパどちらが正解などはない。ただ、ただ、ポピパを抜けるなんて想像もしていないおたえにとってポピパは家族で、はじめから切り離せないものになっていただけだ。

帰る場所があるから新たな経験ができて、刺激を受けて、それはとても楽しいことだけれども。遠く遠くへ進み続けふと振り返ると待ってくれる人がいる。そんな当たり前じゃない当たり前がおたえには何より大切で。それだけの話だったのだ。

 

 

 

 2nd Seasonの総評としては兎に角見ていて楽しいアニメだった。6バンド30人の登場人物が複数人画面上で動いている為、飽きる場面がない。キャラクター自体は所謂キャラナイズされた決め台詞や特徴等はあるものの、それが個性となり30人の中で埋もれることなく生きていた。

1話完結型のストーリーも見やすく、テンポも良い事から誰にでもおすすめできる内容となっている。

その一方で全編を通しポピパが未来へと進みバンドとして成長していく過程も描かれており、バンドリの大切にしている“夢”を中心とした物語も同時に展開されていく。一見ごちゃごちゃとしているがポピパ視点で物語を俯瞰すれば明瞭だ。

 

 そして各バンドの楽曲がどれも良い上に多岐にわたる音楽性を持っていることに驚く。ストーリーの進行に応じOPEDまで変わってしまう徹底っぷりや新曲ラッシュ等バンドリという大ガールズバンドアニメ時代を先導してきたIPの底力を思い知らされた。

 

 Season 3ではどんな物語が待っているのか。六花ちゃんの動向が今から楽しみです。